縄文漆ペン「紅偶(あかたま)」|鳥浜貝塚の赤色漆技法を再現した挑戦

目次

6000年前の赤色を目指して

心に残る懐かしい朱色を追い求めて

日本の鳥浜貝塚から出土した縄文時代(約6000年前)の「赤色漆塗り櫛」の技法でペン制作に挑戦しました。

挑戦するきっかけ

鳥浜貝塚は、福井県若狭町にある縄文時代草創期から前期にかけての集落遺跡で、「縄文のタイムカプセル」とも呼ばれています。
今回、過去の調査で採取された木製漆器の塗膜サンプルをもとに、縄文人の漆の材料技術を分析・再現する学術研究に、漆塗り職人さんが参加されていたからです。

出土した櫛

刻歯式堅櫛(こくししきたてくし)は、藪椿から削り出されており、形は9本の歯をもちニホンジカを思わせる双頭の突起を持っています。表面には漆を塗りベンガラの赤い漆を塗り重ねられていました。

これを塗膜の分析や赤外分光分析、蛍光X線分析などによって詳しく調査され、赤色漆に使われていた顔料は、湿地や用水路にたまる鉄バクテリア由来の生成物を焼いて作られた「パイプ状ベンガラ」であることが分かりました。
これは粒子が管状をしていることからそう呼ばれ、日本で古くから使われてきた赤色顔料のひとつです。

縄文ペンへの挑戦

刻歯式堅櫛をペンとして再現する挑戦は、2024年10月に始まりました。
少量での実験分析を何度も重ね、その積み重ねの先に、本格的な挑戦が始まりました。

鉄バクテリアの採取

採取できる場所は、ご縁のあった方とのつながり、そして採取許可の関係から、このたびは沖縄県の小川で採取された弁柄を用いることとなりました。

パイプ状ベンガラへ

弁柄を硫酸(温泉と同程度の濃度)に漬け、土器を用いて薪で焼き上げます。
この工程においても、縄文の技法をもとに再現しています。

縄文漆へ

焼き上げたものを砕き、乳鉢で丁寧にすり潰したのち、国産漆と混ぜ合わせることで、縄文漆となります。

ペンに選んだ木

刻歯式堅櫛が藪椿から削り出されていたことから、その姿を忠実に再現するため、ペンに用いる木にも、職人が伐採し一年以上天然乾燥させた藪椿を選びました。

縄文ペン「紅偶(あかたま)」完成

筒状ベンガラは、かなり赤みを帯びるところまでたどり着きましたが、漆と混ぜるとチョコレートのような色合いへと変化してしまいます。
それでも、いつかさらに深く美しい赤を目指して、これからも取り組みを重ねてまいります。
縄文時代の技術にこだわって制作したこの作品は、どこか懐かしい気持ちを呼び起こすようなペンに仕上がりました。
諦めることなく、何度も試行錯誤を重ねてくださった職人の皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。

歴史を学びに

ジャパンレッド発祥の地として知られる岡山県の「吹屋ふるさと村」へ、ベンガラを学びに訪れました。
ベンガラ館では製造工程を学ぶことができ、笹畝坑道では銅山や鉄鉱石の歴史に触れることができます。
吹屋は、ベンガラ生産の起源をたどることができる場所です。

2025年は縄文漆だけでなく、失われた幻の吹屋弁柄を現代に蘇らせることにも挑戦しました。

再現するだけではなく、その背景にある歴史や文化をしっかりと学び、皆様にお伝えできるように
福井県若狭町にある「若狭三方縄文博物館」にも足を運びました。
この博物館は、鳥浜貝塚の出土品を中心に縄文文化を紹介している場所です。

日本の美で心を惹きつけ
書き心地で忘れられなくなる
筆記具との出会いに、晴れの美

  • URLをコピーしました!
目次